<< 2013年12月  
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        

ロスト・イアリィ・サマー 後書き

ロスト・イアリィ・サマーの後書きです。

基本的に後書きは書かないのですが、今回の小説については色々と残しておきたいことがありましたので、備忘録的に。
それでも宜しければ、お付き合い頂ければと思います。




このお話は、ネタ的に三つほどが合わさって出来たお話でした。

まず、一つ目が綾時くん。ベス嬢を普通の女の子に〜と言う下りでキタロー揺さぶるというシーン。やるかなぁ、意外とあざといからやりそうだなーと。原作でも自分の本当の姿を見せて、おらおらと脅して(?)くるぐらいですし(笑) 嫉妬も含んでいると更にいいなぁ、と一人妄想したりもしていました(綾→キタ?)

二つ目が刷毛を持ち、頬にペンキをつけたベス嬢。帽子かぶって、オーバーオールを着て、でっかい絵を描いているという。エレベーターガールにしては帽子がちょっと変わっている感じだよな〜、と。もしベスが同じ現代っ子だったなら……と妄想していたら、最終的にこんな感じになっていたように思います。この辺のお話は書いていて非常に楽しかったです。
誰か、今回のベス嬢を絵にし(ry 月光館学園の制服姿でもい(ry

三つ目がP3M(映画)の第二章ビジュアルです。
はい、EALRY SUMMER というキーワードです。初夏ですね。二つ目のシチュと合わせたらええ感じだろうなぁ、とぼやんと思っておりました。

これに一つ目にリンクする形で出てきた泣くキタローを合わせこみ、ごねごねした結果、今回のお話が出来あがりました。有り得ない話だからなぁ、有り得ないけど有り得ることってあるのかなと考えていたら、一つ目の綾時くんがパッと登場して「あー!」となりました。すべて綾時のせいにしてしまえばいい!(おい)
そんなこんなでプロットがガーッと出来上がり、勢いのまま書き始めたお話でしたが、後で落ちると分かっていたからこそ執筆が楽しくて楽しくて仕方がなかった……ごふんげふん(吐血)
スンマセン、元々シリアス傾向のお話が大好きなヤツですので、はい。いやいや、書いている内容自体は辛い部分もありましたが、殆ど手を止めることなくスラスラ執筆作業することが出来ました。自分が書きたかった内容を、書きたいように書けると言うこと程、嬉しいものはありません。
だからこそ、今ぺよんの主花原稿がなかなかうまくいかず苦しんで(以下略)

色々と考えましたが、最後はぼかした状態のあの結末を選びました。
その方が色々と想像できるかな、と。ただ、主ベスはキタローの行く末が決まっている分、最期はどうしても……というのがあって、どの物語を書いていても基本、涙を禁じえません。キタローの境遇が境遇な分、敢えてベス嬢も底抜けに明るく振舞っているんじゃないかなと思うと、もう滾って滾って滾って(落ち着け)

実は私なりの続きもあったりするのですが、書くかは分かりません。それなりに長くなりそうですし、最後は希望を持たせるエンドにするつもりではあるのですけど……不完全な方が美しい終わり方の場合もあります。
気が向いたらちまちま書いていこうかな、と。制服姿のベスも書きたいし、学校生活に入り込むベスも書きたいし、その中で思う存分キタローといちゃつくベスも書きたいし(←)
出来ればこっちも本にしたいな〜とか、贅沢なこと考えてます。現実になっていたら笑ってやってください。わっはー(自分で笑うな)...LKカラー青に銀の箔押しやりたいんだよね(ぼそっと)


あと、宣伝で申し訳ないのですが、先日まで連載していた主ベスシリーズが本になっております。先行で書店委託販売しておりますので、どうぞ宜しくお願い致します。

http://www.toranoana.jp/bl/article/04/0030/17/30/040030173095.html

「ロスト・イアリィ・サマー」では報われなかったクリスマス話が、上記本では報われる方向で描かれています。ある意味、アナザー・ストーリー的な、対になる話とも言えるかもしれません。宜しければ、ご覧になって頂ければと思います。
イベントの初売りは春コミ(03/16・P4花主SP頒布)の予定です。

では、今回のお話が少しでも皆様の心に何か残ったことを願いつつ、締め括ります。最後まで読んで頂き、有難うございました!

permalink |
| - | posted by master

キタローの独白

こういう文章書くの、昔からすごく好きなのです。
冬合わせの主ベス本の序章でもあります。サンプル代わりに、HP見ている人だけに。
宜しければどうぞ。
 ※まだ納得いってない部分があるので変わる可能性がありますが...




 時計はアナログに限る。
 最近はデジタルでも頻繁にカウントアップするものが増えたが、やはりアナログでギミックなものがいい。カチコチと刻まれる秒針の音を聞くたびに生きている実感がする。
 幼い頃、とてつもなく大きな恐怖に襲われた。
 そのせいか、大抵のことに物怖じしない可愛くない子供となった自覚があった。心臓の音は平坦で、揺れることがない。
 時を刻む音だけが生きている証。恐怖を知らない分、喜びも少なかった。無感動な瞳で見る世界は滑稽で、つまらなかった。
 瞼を下すように、世界を閉じた。形見の音楽を愛し、身を埋めるようになった。現実を生きる人は創られた世界だとあざ笑うけれど、馬鹿みたいに真面目に生きるよりはマシ。
 歌で創られた世界は美しい。ひとつの物語を形成するように感情豊かで、聴いているこちらさえも影響を受ける。支配される感覚がたまらなく心地良い。
 自分ではない別の誰かに生き方を定められるくらいなら、現実とは程遠い夢物語に縛られたかった。目の前で起きたことに何も出来ず、ただ恐怖に立ち竦み、佇むことしか出来なかった非力な自分が、不思議な魔法の力を手に入れ、何でも出来てしまうと錯覚できる世界へ旅立ちたかった。

 影時間の存在にはすぐ気づいた。
 夢と現実の境界を踏み越える瞬間は果てなく恐ろしい。耳にかけた音楽も、腕時計の音さえも途切れ、ここ十年味わっていない恐怖と隣り合わせになる。
 明確なる『死』の訪れ。
 血塗られた時計盤を背に、進むしかない。外部音がシャットアウトされてしまった以上、自らの意思で生命の音を紡ぎ出すしかない。
 生きている心地なんて、最初から無かった。
 カーテンを開くと、空の色が怪しかった。大きな満月が不気味に綺麗な夜だった。部屋の外へと連れ出されたのは、夜が完全に更けた頃。
 建物をよじ登ってきた未知なる生物が、一昨日出会ったばかりの女の子を突き飛ばす。
 時を失った世界に轟く音。足元に銃が滑ってくる。
 しろがねの光が「おいで」と誘う。使い方を知らないくせに、手が吸い寄せられた。
 導かれ、おもむろにこめかみに当てる。

「ペ」
 十年前の惨劇の光景が、いつまでも僕を苦しめる。
「ル」
 逃げても、逃げても――精神さえ乗り越えて、呑み込むように侵食してくる。
「ソ」
 ならば、反旗を翻すチャンスなんじゃないだろうか。
「ナ」
 恐怖を激情に塗りかえ、呪縛を解き放つのだ――引き金の指先に力を入れた。

 ぶち抜かれた思考、ひびわれた世界が、砕け散った硝子のようにパキンと割れる。夢と現実の狭間から顕現したのは神だった。願い、焦がれた力が形となる。
 この時、自身を満たしたのはどうしようもない高揚、どうにもならないと突き放していた世界を揺るがす力を手に入れた奇跡の瞬間だった。

 影時間が訪れる。ホルスターの重みを感じながら、今日もあべこべの迷宮を訪れる。ひゅんと剣をしならせ、刃についてしまった真紅を振り払い、上へ上へと駆け上がる。
 もうひとつの鼓動がいたずらに、そっと囁く――その音は終焉へのカウントダウンだよ。
 そんなことも知らずに、自分は――今日も生きている。

permalink |
| - | posted by master
| top |